男性ホルモンの中で中心的な役割をするのが、テストステロンです。このテストステロンの分泌が増えるといいことが一杯あります。男性も女性も、テストステロンの分泌が高いと見た目が良く見える。「見た目が若いと元気で認知力の衰えも少なく、長生きした」という論文もあります。メンタルにも大きな影響を与えていて、第一線で活躍する女性はテストステロンの値が高いという報告もあります。
逆にテストステロンが低いと、様々な問題が出現します。生活習慣病のリスクは有名です。ニューヨーク州立大学が45歳以上の男性1849人を調査したところ、肥満の男性のテストステロン値は低く、BMI(体格指数)の増加に応じてテストステロンが下がっていました。テストステロン値が低い人は肥満になりやすく、糖尿病の危険もあるのです。
テストステロンを上げるには、心、食事、運動の3つが重要です。心の面では、社会に貢献するような経験や、仲間で楽しむことが分泌増加になります。逆に、テストステロン値が下がるとうつ病になりやすいという特徴があります。心の問題で大切なものに、睡眠がありますが、睡眠が短い人はテストステロン値が低いという研究もあるのです。
食事については、たんぱく質を十分にとることです。また、テストステロンを作る精巣・卵巣と副腎は活性酸素に弱いのでタマネギやニンニクなど抗酸化作用の強い食品がおすすめです。ねばねばした食べ物は、抗酸化力が強くテストステロン分泌上昇に役立ちます。
運動は、テストステロンを分泌する大切な行為です。筋肉に刺激をあたえるように、筋肉トレーニングをすると分泌上昇します。有酸素運動として早歩きやスローランニングをしても分泌が上昇します。速度は、楽しく会話できる程度のゆっくりでいいのですが、1日8000歩が適量です。1か月あたりに換算すると、100から120kmの運動量をこなすことができるとテストステロン値は最大になります。
ところが、過ぎたるは猶及ばざるが如しで、運動については過剰になるとテストステロンが下がってしまいます。これは、筆者らが神奈川医学会雑誌に報告した研究でわかったことです。48歳から55歳の男性を調査したところ、1か月のランニングの距離が120kmあたりの人がもっともテストステロン値が高く、その後1か月200kmを過ぎるとテストステロン値が極端に下がってきます。最近は、ランニングブームで、多くの方がマラソンを始めていますが、その多くが沢山練習をし過ぎてしまって怪我に悩まされています。そこで、日本臨床スポーツ医学会では1か月の走行距離は中年男性200km以下、中年女性150kmが提唱されています。その目安とテストステロンの変化はまさに一致しているのです。このことは、エリートでも同じです。アメリカン・カレッジ・オブ・スポーツメディスン2015年次総会で、コネチカット大学による発表では、20人のエリートランナーを集めたところテストステロンの低いランナーが全員で、食事を変えても改善できなかった。つまり、テストステロンは運動のし過ぎでは低くなったままということなのです。
適度な運動を中心に、よい食事、刺激のある毎日を送っていきましょう。
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