すべては遺伝子ではない。
20世紀の中ごろ、英国のコンラッド・ワディントンという学者が、生物の発生について研究をしています。彼は、「エピジェネティクス」という概念を考え出しました。
それは環境因子
「エピ(epi」とはギリシャ語で「~の上に」という接頭語で、「ジェネティクス」は「遺伝学」を意味します。言い換えると、「今までの遺伝学の上にあるもの」というほどの意味です
それまでは、「遺伝」だけで生命現象を説明してましたが、彼は、さらに「環境」を重要に考えました。
遺伝因子と環境因子
発生分化の過程で細胞の運命を決定するのは、遺伝因子と環境因子の相互作用なのです。それを彼は、「エピジェネティック・ランドスケープ」と説明しました。
渓谷におおきな源泉があり、滝があります。川がながれていきます。その途中でとまった場所が大切です。最終的に止まったところが、神経細胞であったり、血液細胞であったり、細胞の分化の終着点というわけです。この流れていく道は、環境の因子です。
ゲノムからエピジェネデックへ
エピジェネティクスとは、ゲノム(設計図)の中から、使う遺伝子、使わない遺伝子を選ぶことを影響します。DNAには全部の遺伝子があるから、どの遺伝子にスイッチを入れるかは、環境によります。神経細胞、血液細胞、肝細胞など、身体を構成する質の異なった細胞をつくりだす仕組みがあるのです。
ヒトのゲノムには約2万5000個の遺伝子があります。このすべてに、<使う><使わない>という印がついています。印づけられたゲノムのことを「エピゲノム」といいます。印づけはDNAのメチル化、ヒストンの修飾、そして、クロマチン(DNAとタンパク質が一緒になったもの)によって行われます。
こうしたゲノムの印づけは、細胞の分化や私たちの健康に重要な役割を果たすとともに、がんや生活習慣病などの発症に関わることが現在とても注目されています。