Femaleという単語に込められた女性の愛
女性と英語で書くと、医学の世界ではfemaleを使います。今回は、この単語に込められた愛の話です。
Femaleについているmaleという単語。この語源は、ラテン語のmas (編集部へ aの上にバーをつけてください)。”男らしい“という言葉です。では、fe-という接頭語の語源は、ラテン語で“吸う”という意味です。吸うといえば、赤ちゃんとおっぱい。女性が赤ちゃんを抱きかかえ、乳房を吸う行為、これが、fe-なのです。
これは、古代人の性別のイメージを継承しています。男性のイメージがペニスであるのに対して、女性な乳房なのです。乳房は赤ちゃんが吸うところ、だから、feが吸うという言葉と、女性が結びつくのです。ちなみに、ここから胎児(Fetus)、受精(fecundation)なども派生しています。
古代人が乳房を女性のイメージにしていたのは、先史時代の女神からも見て取れます。
古代ギリシャの女性のシンボル的な神は、月の女神アルテミスといいます。(古ギリシャ語: Ἄρτεμις, Artemis)。太陽の神アポロンの双子の妹です。日本ではあまり知られていませんが、とても人気があります。
この女神の人気は、多くの彫像がつくられたことからもわかります。有名なのは、ルーブル博物館にある女神像。これは、ミロのヴィーナスそっくりの顔に、弓をもち、若い鹿と連れています。現代の巨匠なら、ロックフェラーセンターモニュメントで有名なポール・マンシップの“犬と女神”、他にもエドワード・マックカートンなど数多い彫刻作家は、アルテミスをモチーフに作り続けています。
しかし、先史時代のアルテミス像は違います。現在のトルコ西部にある古代都市エペソスに、先史時代のアルテミス神殿が残っています。歴史のわからない謎の多い神殿です。この神殿のアルテミス像は、首から下の全身に乳房が付いています。よく似た像はバチカンでも大切にされています。
乳房が女性の象徴として考えられてきたのは、性ホルモン学的に、女性ホルモンと愛情ホルモンが関係しています。女性ホルモンであるエストロゲンは、愛情を示します。その役割は愛情です。エストロゲンは身近なもの、とくに、乳房を吸いに来る赤ちゃんに向けられます。
赤ちゃんを抱いたときに分泌されるのは、オキシトシンです。視床下部の『室傍核』でつくられ、下垂体に運ばれ分泌されます。なんと、尿の調節をするバゾプレッシンと双子です。アミノ酸配列が全体で9個なのですが、オキシトシンとバゾプレッシンは2個ちがうだけなのです。オキシトシンは、愛おしさを倍増される役割があります。それどころか、伝染するのです。一人の女性が赤ちゃんを抱いて幸せな態度をすると、まわりの女性も分泌されるのです。
女性のシンボル乳房と赤ちゃん。それは、オキシトシンや女性ホルモンでつながっていて、古代人たちが女性のイメージと融合させていったこと、十分おわかりいただけたとおもいます。Femaleという言葉には、こんなにも奥の深さがあったのですね。
参考文献
1)「トルコの古代エフェソス都市遺跡」Ephesusbreeze.com
2)エフェソス都市遺跡公式ホームページhttp://www.muze.gov.tr/ephesus
3)Jones C et al Oxytocin and social functioning. Dialogues Clin Neurosci. 2017 Jun;19(2):193-201.