神の葉っぱと不老長寿
神は歳をとりません。ギリシャ神話も、日本の神話も、いつまでも若々しい姿のままです。そこで、古代人たちは、神は不老長寿の薬を持っているからだと思われてきました。
ギリシャ神話で出てくる不老長寿の薬はambrosiaアムプロシアーといいます。aは否定の接頭語、brots(編集部へoの上に´)は死を意味します。言葉は、インドのサンスクリット語でअमृत(amṛta)から渡ってきました。その時から、神が不滅を達成するために使う飲み物や食べ物という意味を持ちます。
代表的な芸術品では、ビクトリア&アルバート博物館(ロンドン)に保管されている1530年のニコラダルビーノのマジョリカがあります。この皿には、なにやらモコモコした雲のような謎のたべものを神たちが食べている絵が描か羅ています。このモコモコしたものニコラダルビーノの時代にも諸説ありました。
候補の一つは、nectarネクター。この単語も、nec(死)とtar(克服)という言葉からできたものですが、植物の蜜nectary(ギリシャ語Nektar)をさしました。代表格はハチミツですが、植物の花や葉っぱから出てくる蜜ならなんでもネクターです。古代にもっとも愛読されたホメロスの詩には、女神ヘラが、 “ネクターを食して彼女の素敵な肉体からすべての汚れをきれいにした”と書かれた一節もあります。
神の食物という言葉もあります。これは、テオブロミンtheobromineで、theos(神) (編集部へoの上に´)とbroma(食べ物) (編集部へoの上に´)です。テオブロミンというのは、現在のカカオの主成分の学名に使われています。チョコレートやお茶に含まれていまして、カフェインの作用を和らげて人体には大変よい物質です。テオフィリンtheophyllineになると薬です。茶葉に含まれる苦味成分なのですが、気管支喘息や慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器系疾患の治療に用いられるものです。ただし、副作用としてショックや痙攣をおこしますので、慎重に使う薬です。もちろん、お茶の苦みとして飲む程度の量なら、なんら副作用はでてきません。やはり、植物の葉っぱが関係してくるのは、歴史の流れなんでしょうね。
日本では不老不死の薬といえば、中世から飲まれている八味地黄丸というものがあります。八味丸、腎気丸、八味腎気丸ともいわれ、日本の歴史上何度も形を改善されてきました。現在の投薬に近い薬は戦国時代 曲直瀬道三という医師により完成されました。毛利元就、徳川家康、そのほか大奥に勤務していた歴代の女性陣が愛用している薬です。名前のとおり、8種類の葉っぱを集めたもので不老不死の薬と思われていました。八味地黄丸は、性ホルモンのすべてが改善するという効能があり、更年期の男性女性どころか、閉経後の女性にも誰でも効果があります。実際の臨床で性ホルモンの量をあげると長生きをしてきますので、とても効果があります。
東洋・西洋とわず、不老不死の薬は、神の葉っぱなんですよね。