医学研究は歴史から:精液の研究
昔から精液の研究は注目されているのです。考えてみると古代の人たちにとって子供が生まれてくるというのは、実に不思議だったと思います。ある日突然女性のおなかが大きくなって赤ちゃんが育つのですから、その理由を知りたいと思うもの当然です。多くの人は、男性から出てくる精液が“種”だと思いました。その種が女性の体で芽を出し育っているのではないかと考えたと思います。そのことは、単語の歴史に残っています。精液はsemenと英語で書きますが、これは、種というラテン語でsemen(編集部へ、最初のeの文字の上にーをつけて)が語源です。さらに古代の言葉から考えると、semen(編集部へ、最初のeの文字の上にーをつけて)は、蒔くという動名詞serere 、動詞sero(編集部へ、oの文字の上にーをつけて)から派生しています。ちなみに、Se(編集部へ、最初のeの文字の上にーをつけて)は“蒔く”という言葉、menはギリシャ語-maから出てきた中性名詞をつくる語尾です。
英国のレスター大学リン・フォックスホールらの1998年の研究によると、古代ギリシャ学者のアリストテレスは、精液の重要性に注目していたとされます。彼は、精液が血液の一つで、食事と密接な関係があるとしました。また、精液には年齢があることを研究していたとわかりました。
精液の研究というのは、いま最も注目される分野です。日本のベンチャー企業を立ち上げた広島大の島田らの研究では、精液の中の栄養素の偏り、例えば、糖分、アミノ酸などが、精子の運動できる時間に関係していると報告しました。彼らは、精液を調べることで、食生活、メタボ、睡眠時間などの健康情報とリンクできる可能性があります。
精液の研究は他にも様々な分野が現在あります。例えば、感染症の世界では、精液に性感染症の原因菌が混在して感染を起こすことが以前からわかっていましたが、そのほかに現代重大な病気であるジカウイルス、エボラウイルスは、遺伝子RNAは持続的に感染してしまいます。
精液は、世界中の原始的な神話で、母乳に類似していると非常によく考えられています。バリ島での神話や、聖書にも出てきます。聖書のソロモンの歌という詩に出てくる露とは精液を意味すると考える説が有力です。精液は宝石の元とも考えられていました。同じことは現代にもあります。精液をアンチエイジングに使おうという考えです。この中で特筆すべきは、2015年の韓国の研究で、精液を精製したところTNF-αという物質を介して動脈硬化を抑える働きを見せたのです。
さて、精液をテーマに取り上げましたが、性に関する研究は歴史に多々あります。突き詰めれば、生命の神秘に対して古代から私たち人類が注目してきたからなのでしょう。歴史を見つめると、あたらしい医学知識への展望が開けてきます。性医学とは古代でも現代でも実に楽しい分野なんだからですね。