社会の高齢化に伴い、加齢による眼の疾患(白内障、緑内障、加齢黄斑変性など)を持つ患者が増加しています。同時に、加齢による認知機能の低下や認知症の発症も増えています。
視覚情報は知覚情報の8割を占めるとされ、視覚障害は認知症のリスク要因とされていますが、具体的にどのような視覚障害が認知機能に影響を与えるかはまだはっきりしていません。この研究では、遠見視力、近見視力、コントラスト感度と認知機能との関連性を調査しました。
この研究によれば、すべてのタイプの視覚障害(遠用視覚障害、近用視覚障害、コントラスト感度障害)が、認知症の有病率と関連していました。特に複数の視覚障害を同時に持っている場合、認知症との関連がより強くなることが分かりました。
ただし、他の視野検査との関連についてはまだ明らかになっていない部分もあります。我が国では緑内障が失明原因の第一位ですが、緑内障は視野検査で異常が確認される疾患です。視野異常が認知機能にどのような影響を与えるかについては、今後の研究結果が期待されます。
さらに、これらの視覚障害を改善することが、認知機能テストの成績にどのような影響を与えるのかも気になるところです。もし視機能回復によって認知症予防が可能と示されれば、手術をためらっている患者さんに対して後押しとなる情報となるでしょう。
日常臨床での活用: 認知症には認知機能の低下だけでなく、その他の症状にも悩まされることがあります。今回の研究結果から、視覚機能が認知機能の維持に重要な役割を果たしていることが示されました。そして視覚障害の改善が認知症予防につながる可能性があることが示唆されています。
例えば、遠見視力や近見視力、コントラスト感度は白内障によって悪化することが知られています。つまり、これらの視覚障害を持つ白内障を治療することは、認知症予防に有益である可能性が考えられます。同様に、他の眼の疾患にも同じことが言えるかもしれません。したがって、一定の年齢で白内障手術などを行うことは、理にかなっていると思う
Objectively Measured Visual Impairment and Dementia Prevalence in Older Adults in the US