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メッシュを使った骨盤臓器脱手術の強い慢性疼痛

 

メッシュを使った骨盤臓器脱手術とは?

骨盤臓器脱とは、骨盤内の臓器(膀胱・子宮・直腸など)が下がって膣の方へ出てきてしまう病気です。
これを治すための一つの方法が、膣や腹部から「メッシュ」と呼ばれる人工のネット状素材を入れて臓器を支える手術です。メッシュは非吸収性(体内で溶けない)素材で作られ、長期間の安定性を狙っています。

合併症はどれくらい起こるの?

今回紹介する国際的な研究(ヨーロッパの多施設研究)では、非吸収性合成メッシュを使った骨盤臓器脱手術後の合併症の発生頻度は全体で5%未満でした。
つまり、多くの患者さんでは大きな問題は起きません。しかし、起きた場合は生活の質(Quality of Life)を大きく下げる重い症状になることがあります。

重篤な症状の例

 

強い慢性疼痛(歩行や座位がつらくなる)

性交痛(生活や人間関係への影響)

メッシュの露出(膣からメッシュが見える状態)

感染や炎症(抗菌薬や再手術が必要になる場合)

これらは頻度は低いものの、一度起きると長期的な対応が必要になることがあります。

なぜ重篤な症状が生活の質に影響するの?

例えば、慢性的な骨盤痛や性交痛は、日常生活の活動量や社会参加を制限し、精神的ストレスや抑うつを引き起こすことがあります。また、再手術や長期通院が必要になる場合もあり、時間的・経済的負担が増加します。

 

医学生・若手医療者へのポイント

合併症率は低くても、「起きたときの影響」が非常に大きいことを理解する。

患者説明では「頻度」だけでなく、「重症度」と「生活への影響」をバランスよく伝える。

メッシュ素材や術式によるリスク差、患者背景(糖尿病、喫煙歴など)も考慮に入れる。

手術選択は患者の価値観を尊重し、shared decision making(共有意思決定)を行う。

 

Grigoriadis, T., Zacharakis, D., Zachou, T. & Salvatore, S. Complications related to the use of non-absorbable synthetic mesh in pelvic organ prolapse surgery: incidence, risk factors, and impact on quality of life. Eur. J. Obstet. Gynecol. Reprod. Biol. 295, 56–63 (2024). https://doi.org/10.1016/j.ejogrb.2024.01.021

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