メッシュ手術の「総まとめ」研究とは?
骨盤臓器脱の手術では、人工メッシュを用いる方法と、自分の組織(ネイティブティッシュ)を使う方法があります。
米国FDA(食品医薬品局)は2011年以降、メッシュ使用に関する安全性や注意喚起を繰り返し発表してきました。今回紹介する研究は、FDAの声明から最新の臨床研究までをシステマティックレビューとして整理し、メッシュの有用性とリスクを包括的に評価したものです。
メッシュの利点
-
再発率が低い可能性:とくに前壁(膀胱側)の修復では、自分の組織のみの手術よりも再発が少ないという報告があります。
-
術後の膣形態保持:膣の長さや形を保てる場合があり、一部では性生活の満足度向上にもつながる可能性。
潜在的なリスク
-
慢性疼痛(骨盤痛、性交痛など)
-
メッシュの露出・びらん
-
感染
-
再手術の必要性(摘出や修復)
発生頻度は術式や患者背景によって異なりますが、リスクは長期的に続く場合があります。
FDAの立場と現状
-
2019年、FDAは経膣メッシュによる前後壁修復手術を米国内で事実上中止。
-
腹腔鏡や開腹経路でのメッシュ使用は依然として行われており、適応と術者の経験がカギとなります。
患者さんへのメッセージ
-
メッシュ手術は再発予防の面で優れた場合がある一方、合併症が生活の質を大きく損なう可能性があります。
-
手術前に、自分に合った方法(メッシュ有り/無し)を医師と十分に話し合いましょう。
-
術後に痛みや違和感が続く場合は、早めの受診が大切です。
医学生・若手医療者へのポイント
-
メッシュ手術は「頻度が低くても重大な合併症があり得る」ことを念頭に置く。
-
患者説明では、利点・欠点を数値で示し、Shared Decision Makingを実践する。
-
研究批判的読解(Critical Appraisal)を通じて、エビデンスレベルを正しく評価する習慣を身につける。
Serati, M., Salvatore, S., Grigoriadis, T., Zacharakis, D. & Zachou, T. Mesh use in pelvic organ prolapse surgery: a systematic review of benefits and risks from FDA statements to recent evidence. J. Pers. Med. 14, 622 (2024). https://doi.org/10.3390/jpm14060622