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乳がんを抑える早歩き

乳がんを抑える早歩き

乳がんは、わが国全体で8万6千人余の女性が罹患していると予想されて、女性のがん全体の23%にあたります。乳がんの発生・増殖・転移には、女性ホルモンのエストロゲンが関係しています。エストロゲンが作用するものとしては、月経や出産があるわけですから、乳がんは、初潮年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない、といったことがリスク要因です。飲酒の習慣はリスクが高くなり、野菜・果物・イソフラボンなどはがんを抑制する栄養素として注目されていますが、まだ儒文なデータがでていません。
それに比べて、閉経後の女性でのデータで、運動が乳がんのリスクを減少させることがほぼ確実とされています。2010年に発表されたハーバード大学の検討では、9万5396人の閉経後女性を20年間追跡調査したところ、4782人の乳がんが発生しました。その患者さんをさらに分析すると、運動をしていた人では乳がんのリスクが低かったのです。
このデータによると適切な運動とは早歩きでした。運動の強度は、MET(代謝当量)という単位で評価をします。静かに1時間座っているのは、運動強度が1METといいます。ふつうの歩行を1時間すると3 METS、早歩きを1時間すると4METSです。ここで、ハーバード大学の研究では、1週間に3METSしか運動しない人の乳がんになるリスクを1.0とすると、27METSの運動をする人は0.85でした。
閉経時に毎日30分も早歩きをしなかった人でも、毎日30分の早歩きを追加するようにしたら、乳がんのリスクが10%も下がっていました。ハーバード大学の研究者らは、『水泳やジョギングなど他の運動も乳がんのリスクをさげたが、もっとも効果的だったのは活発なウオーキングである』と述べています。また、そのデータは1時間に5から6km程度の早歩きでした。

最近は、運動がさかんになり、閉経後の女性がマラソン大会に参加するは多くなってきました。私は趣味を兼ねて多くのマラソン大会でドクターランナーとして参加しています。そんな参加大会の一つが名古屋で行われる名古屋ウイメンズマラソンという大会です。毎年3月の第三週に開催されます。スタートは名古屋ドームで、名古屋の街を1週して再び名古屋ドームにもどってきます。この道、私の母校が名古屋ドームのすぐそばにあるので高校時代の練習コースでした。全国のマラソンの中で、登り下りが一切ないフラットな道で、しかも制限時間がとくに長く7時間ので、ペース配分さえちゃんとできれば初心者でも完走できます。

名古屋ウイメンズマラソンを完走するには、ゆっくりでも42kmを走ることができればいいので、毎週こつこつ練習します。多くの人が月間120km程度ジョギングできれば完走できるようになります。1週間に5日間、1回6km程度で練習を3か月だけしてみてください。かなりゆっくりゆっくりのペースで、1時間あたり5から6km程度の速さです。これはジョギングとしてはかなり遅くて、早歩き程度です。
みなさん、お気づきになりました?名古屋ウイメンズマラソンに参加できる程度、制限時間ぎりぎりで完走できるレベルになると、なんと乳がんのリスクがもっとも下がる運動量と一致します。もっともっとたくさん走り込みをすれば、当日よい記録で完走をできますが、そのかわり怪我の可能性があります。日本臨床スポーツ医学会の推奨では閉経前後の女性は1か月150km以内がベストだそうで、過剰な練習も勧められません。ですから、乳がんをおさえるペースは本当にちょうどいいところなんです。

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