フルマラソン完走のコツは、何よりも大切なのは、自分の心臓のことを知ることです。
アメリカ心臓協会によると、人間の心臓は70年間の生涯の中で25億回以上拍動します。1日に平均10万回拍動し、約7570Lの血液を送ります。心臓が1分間に拍動する回数を心拍数といいます。心拍数は、リラックスしたり、横たわっていたりして安静にしていると、最も低い値になります。安静時の心拍数は通常、毎分60~100回です。
心臓を自動車のエンジン、血液中の酸素をガソリンと考えてください。より速くエンジンを動かすほど、消費するガソリンは多くなります。身体活動によって心拍数が上がると、多くの酸素が必要です。限界を超えると、当然オーバーヒートを起こしてしまいます。
心拍数が毎分100回以上の状態を「頻脈」といいます。頻脈の原因としては、発熱、貧血、脱水、肉体的または感情的なストレスが挙げられます。運動中は、交感神経が興奮して心拍数が増えますので、頻脈の人がマラソンをするとオーバーヒートを起こしやすく危険です。
2010年のヨーロピアン・ハート・ジャーナルに掲載されたある研究では、安静時の心拍数が84回以上の人は、84回未満の人より心臓病で死亡する危険性が55%高いと報告されています。
マラソンを始める前に、自分の安静時や運動時の心拍数をきちんと知ってください。
◇「スポーツ心臓」にはなれない
ランナーの多くは、心拍数が上がりすぎることのリスクを知っています。そして、よくこんな話をするランナーがいます。「毎日ランニングをしていたら心臓の筋肉が増えて、拍動1回で大量の血液を送ることができるようになった。そして、安静時の心拍数が40回になった」「マラソン中に心拍数が上がり過ぎないように、練習を積んで安静時の心拍数を低くするんだ」
確かにランナーを診察すると、安静時心拍数が50回以下の人にしばしば出会います。しかし、ほとんどの人は訓練で心拍数が低くなったわけではありません。
スポーツをすることで心臓がそれに応じて大きくなることを、「スポーツ心臓」と言います。スポーツ心臓になれば、1回の拍動で送り出せる血液量が増えて、運動時の心臓への負担が少なくて済むと考える人もいます。しかし、そもそも「スポーツ心臓」にはきちんとした定義がなく、
つまり、マラソン練習でスポーツ心臓になるということは、ほとんどありえないと考えてください。
安静時の心拍数が少なすぎるのも多すぎるのも、隠れた病気を持っている可能性がありますので、一度内科医の診察を受けておくといいでしょう。
心拍数を確認しながら走る
完走のためには、心拍数を確認しながら走ることが重要です。腕時計型の端末「フィットネストラッカー」も手軽に購入できますので活用してはいかがでしょう。2017年に米スタンフォード大学が公開したデータによると、七つのフィットネストラッカーを調べたところ、そのうち六つが95%以上正確に心拍数を測定していたそうです。
機器がない場合は自分で触診することも可能です。
頸(けい)動脈で測定する場合は、人差し指と中指を首の横に当てて動脈を探してください。手首で確認したい場合は、手首の親指側にある橈骨(とうこつ)動脈を探して人差し指と中指を置きます。脈拍数を15秒間数えてその数字に4を掛ければ心拍数が分かります。
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