最近、増えてきているがんです。
前立腺とは?
前立腺は男性特有の臓器です。膀胱の下に位置し、尿道のまわりを取り囲む構造で、栗の実のような形をしています。
前立腺は、排尿のときに尿の勢いを維持したり、精液の一部に含まれる前立腺液をつくることで、射精の補助をします。前立腺液には、PSAというタンパク質が含まれいて、PSAは前立腺から精液中に分泌されますが、ごく一部は血液中に取り込まれます。
前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺の細胞が、遺伝子の異常から、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期に発見すれば治癒することが可能です。近くのリンパ節や骨に転移することが大多数をしめあすが、肝臓などに転移することもあります。前立腺がんの中には、進行がゆっくりで、寿命に影響しないと場合もあります。がん以外の原因で死亡した男性を調べた結果、前立腺がんであったことが確認されることがあります(ラテントがん)
症状
早期の前立腺がんは、自覚症状がありません。まれに、尿が出にくい、排尿の回数が多いなどの症状でみつかる場合もあります。進行すると、血尿や、腰痛などの骨への転移による痛みがみられることがあります。
原因
前立腺がんのリスクを高める要因として、前立腺がんの家族歴、高年齢が報告されています。その他にも肥満、食品(カルシウムの過剰摂取など)、喫煙などについて多くの研究が行われています。まだ明らかではない項目が多いです。
検査の種類
PSA検査
PSA検査は早期発見するための最も有用な採血による検査です。がんや炎症により前立腺組織が壊れると、本来尿や精液にでるはずのPSAが血液中に漏れ出し、血中の測定値が高くなります。
基準値は一般的には0~4ng/mLとされています。
100ng/mLを超える場合には前立腺がんが強く疑われ、転移を検索するべきです。
PSAには、遊離型PSA(free PSA)と結合型PSA(complexed PSA)の2種類があります。
直腸診・経直腸エコー(経直腸的前立腺超音波検査)
前立腺生検
初回の生検では10~12カ所の組織採取を行います。
前立腺生検でがんが発見されなかった場合にも、PSA検査を継続し、PSA値が上昇する場合には再生検が必要になることがあります。
前立腺生検の合併症には、出血、感染、排尿困難などがあります。
画像診断
CT検査では、リンパ節転移の有無や肺転移の有無を確認するために行われます。
病期と治療の選択
病期
(1)TNM分類
一般的に、病期分類にはTNM分類が用いられています。
表1は病期分類をまとめたものです。病期は、身体所見、画像診断などから、TNM分類に基づいて診断します。
T:がんが前立腺の中にとどまっているか、周辺の組織・臓器にまで及んでいるか。
N:前立腺からのリンパ液が流れている近くのリンパ節(所属リンパ節)へ転移しているか。
M:離れた臓器への転移(遠隔転移)があるか。
T、N、Mはさらに数種類に分けられます。
T1 | 直腸診で明らかにならず、偶然に発見されたがん |
T1a | 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%以下に発見されたがん |
T1b | 前立腺肥大症などの手術で切り取った組織の5%を超えて発見されたがん |
T1c | PSAの上昇などのため、針生検によって発見されたがん |
T2 | 直腸診で異常がみられ、前立腺内にとどまるがん |
T2a | 左右どちらかの1/2までにとどまるがん |
T2b | 左右どちらかだけ1/2を超えるがん |
T2c | 左右の両方に及ぶがん |
T3 | 前立腺をおおう膜(被膜)を越えて広がったがん |
T3a | 被膜の外に広がっているがん(片方または左右両方、顕微鏡的な膀胱への浸潤) |
T3b | 精のうまで及んだがん |
T4 | 前立腺に隣接する組織(膀胱、直腸、骨盤壁など)に及んだがん |
N0 | 所属リンパ節への転移はない |
N1 | 所属リンパ節への転移がある |
M0 | 遠隔転移はない |
M1 | 遠隔転移がある |
リスク分類
転移のない前立腺がんは、3つの因子(T-病期、グリーソンスコア、PSA値)を用いて低リスク群、中間リスク群、高リスク群に分けられます。
主にNCCNのリスク分類(表2)が用いられています。
低リスク | 病期T1~T2a、グリーソンスコア6以下、PSA値10ng/mL未満 |
中間リスク | 病期T2b~T2c、グリーソンスコア7、または PSA値10~20ng/mL |
高リスク | 病期T3a、グリーソンスコア8~10、または PSA値20ng/mL以上 |
治療の選択
治療法は、標準治療に基づいて、体の状態や年齢、人生観の希望なども含め検討していきます。
前立腺がんの主な治療法は、監視療法、手術(外科治療)、放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法です。複数の治療法が選択可能な場合があります。PSA値、腫瘍の悪性度(グリーソンスコア)、リスク分類、年齢、期待余命(これから先、どのくらい生きることができるかという見通し)、患者さんの治療に対する人生観が重要です
●生殖能力について
●フォーカルセラピーについて
手術(外科治療)
1)開腹手術(恥骨後式前立腺全摘除術)
2)腹腔鏡手術(腹腔鏡下前立腺全摘除術)
3)ロボット手術(ロボット支援前立腺全摘除術)
4)術後合併症
(1)尿失禁
(2)性機能障害
放射線治療
外照射療法
治療範囲をコンピューターで前立腺の形に合わせることで、周囲の臓器(直腸や膀胱)にあたる量を減らす三次元原体照射や、その進化形である強度変調放射線治療(IMRT)が用いられる施設もあります。一般的に、1日1回、週5回で7~8週間前後を要します。
組織内照射療法(密封小線源療法)
組織内照射療法は、小さな粒状の容器に放射線を出す物質を密封した針のようなもの(放射線源)を前立腺の中に入れて体内から照射する方法です。がん組織のすぐ近くに放射線源があるため位置がずれにくく、非常に高い線量を照射することができます。
組織内照射療法で主なものは、永久的に埋め込む方法(密封小線源永久挿入療法[LDR:low dose rate])、一時的に埋め込む方法(高線量率組織内照射法[HDR:high dose rate])です。
内分泌療法(ホルモン療法)
(1)内分泌治療の問題点
(2)去勢抵抗性前立腺がんの治療
(3)内分泌治療の副作用
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