この論文では、古典的ホジキンリンパ腫(CHL)における予後予測ツールの更新に着目しています。CHLは主に若年成人に発症する悪性リンパ腫であり、一般的には予後が良好です。現在、CHLの予後予測にはGerman Hodgkin Study Groupが1998年に提案した国際予後スコア(IPS)が広く使われています。しかし、近年ではA+AVD療法などの治療法の進展により、CHLの治療戦略および予後が改善しています。そのため、新たな予後予測ツールが求められていました。
この研究では、Hodgkin Lymphoma International Study for Individual Care(HoLISTIC)コンソーシアムがデータベースを作成し、新たに診断された進行期CHLの個別患者データを取得しました。このデータを活用して、進行期CHL国際予後指標(A-HIPI)の開発と検証を行いました。
A-HIPIの開発コホートには、1996年から2014年の間に実施された8件の第III相臨床試験から4022例、検証コホートには1996年から2019年に構築された4件のレジストリから1431例が登録されました。対象は18-65歳の新たに診断されたステージIIB、IIIまたはIVの進行期CHL患者でした。
A-HIPIの予後予測モデルには年齢、病期、リンパ球数、アルブミン値、性別、巨大腫瘍病変、ヘモグロビン値が組み込まれており、5年無増悪生存率(PFS)は77%、5年全生存率(OS)は92%と示されました。
この結果から、A-HIPIは従来のIPSよりも進行期CHLに対する予後予測指標として優れていると考えられました。
日常臨床での活用: この研究は臨床試験のデータセットを解析したものであり、高齢者に対するデータが少なく、新薬の導入前のデータも含まれています。そのため、さらなる臨床試験や実臨床における検証が必要です。しかし、A-HIPIは従来のIPSよりも良好な予後予測指標としての可能性が示されました。今後、さらなる研究によってその有用性が明らかにされれば、CHLの治療戦略や予後予測において重要なツールとなるでしょう。また、日本国内での検証も期待されます。