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アレクサンドロス大王とアンドロゲン

最近思うのですが、本当に“かっこいい”というのは、どんなことなんでしょう。社会のことを思って行動する、目の前の利益よりも大局をみる、大きな仕事をして貢献する。そんな言い方をする人は多いと思います。この表現で指している“かっこいい”というのは、性ホルモンの関係なのです。じゃあ、かっこいい人は?と海外で質問すると必ず出てくる人物にアレクサンドロス大王がいます。

大きな仕事の朝からアンドロゲン高値
 アレクサンドロス大王といえば、説明するまでもなく巨大帝国を作った英雄ですね。縄張りを広げる活動は生物学で『勝者効果』といいアンドロゲンが担っています。ケンブリッジ大学のコーツとハーバートという二人が、2008年に行った研究があります。コーツ先生自身ももともとトレーダーでしたが、学者に転身したという異色の経歴を持っていますので、ロンドンの金融街に働くトレーダーの血液データに注目しました。彼らが測定したのは、アンドロゲンの代表であるテストステロン、そして、対照としてコルチゾールです。
National Academy of Sciences and Proceedings に発表されたこの研究では、17人の男性被験者から、午前11時と午後4時に8日間連続して綿棒を使って唾液を採取し、含まれていたホルモンを分析しました。
 トレーダーは儲けが大きくでた日ほどテストステロン量が高いとわかりました。さらに、大きな損をした日も量が高いことが判明しました。一方で、テストステロンの量が少ない人は儲けも損も小さいことがわかりました。それも、大きな仕事をした後の唾液ではなくて、その日の朝からテストステロンが高値だったのです。とても興味深い研究ですね。仕事の大きさがホルモンに関係しているのです。
 

アレクサンドロス大王のリスク管理
 アレクサンドロス大王に話を進めると、とても大きな仕事をしたわけですが、その分リスクが大きいわけです。彼の遠征についてちょっと考えてみましょう。彼はBC336から323年のマケドニアの君主です。ペルシャに侵攻したのはBC334年。アカイメネス朝の最後の君主ダレイオス3世に連戦連勝して滅ぼします。インダス川を渡りインドまで進行する直前で引き返し、バビロンで急逝します。
 大王の遠征を考えるとワクワクするアレクサンドロス・ロマンがあるのですが、現実問題として彼がインダス川まで来た時に兵隊はどうしたのでしょうか?実は、ギリシャからの援軍を得ていたのです。携帯電話もメールもない時代に、これだけの援軍を要請できる技術はなんだろうと不思議なところですが、ライフネット生命の出口治明氏は、ダレイオスが作った道路を利用したのではないかと指摘します。冷静に情報をあつめて、進軍による混乱を対処したわけですね。リスク管理の典型的な例だと思います。
 
リスク管理には、コルチゾール
 社会性のある大きな仕事をする、過去の遺産を活用する、そして、集団を動かす力、すべてアンドロゲンの得意とするところです。しかし、それにはリスクがつきもので、どのように体が反応するかは重要です。先にあげたトレーダーとホルモンの研究では、金融リスクについても考えています。トレーダーは、市場の変動制が高いほど、翌日の市場価格の予測は不確実になります。このような分散が大きければ大きい時ほど、平均コルチゾールレベルが高いとわかりました。
 コルチゾールの高い状態というのは、どんな生理反応があるのでしょう。動物は恐ろしい出来事に遭遇すると、すぐに逃げないといけません。このために、最初に起こるのは、頻尿です。大腸に便があれば排便、重量を減らします。テストステロンの合成も作用もコルチゾールにより抑制されます。そして、生理学的に中程度のコレステロールの暴露は、精神に対して、より注意深く、警戒心を強く、信号の察知能力を高めます。

アレクサンドロスの名前の歴史
 アレクサンドロスという名前にも注目してみます。アンドロゲンというホルモンに似ていますね。アンドロゲンの英語のつづりは、Androgen。このandroという言葉は、Androsのことで、男らしいという言葉です。たとえば、かっこいい男のイメージは、
英語だと、Andrew
独語だと、Andreas
フランス語だと、Andre
という名前がありまして、みんなAndrosが語源です。これらの呼び名は、どの国もAndyです。なまって、Dandyという英語になります。
もうおわかりと思いますが、アレクサンドロス大王は、Androsという接頭語から作られています。Androsと、Alekseinという”撃退する”というギリシャ語の名詞にあわせて作られた”撃退する男”という意味なのです。
美女のアンドロメダという王女がいますね。ギリシャ神話で、タイタンの戦いの一幕で、ペルセウスが助けた娘です。彼女のアンドロメダは、Androが男性の意味ですので、男性を使う女性、つまり、夫を仕事で活躍させる妻 という意味が込められています。

リーダーとしてのアンドロゲン
アンドロゲンの値が高くなると、自然災害へのボランティア活動や寄付、弱者へのいたわりの気持ちが高まることが知られています。自分の不利益を顧みず、仲間のために努力できる気持ち、それはアンドロゲンそのものです。アレクサンドロス大王は、”撃退する男”という意味で名付けられたのですが、マケドニア国民には国民のことを思う男でもあったのでしょう。だから大軍団は彼のロマンについてきたのでしょう。
では、今日はここまでで。お楽しみいただけたら幸いです。

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